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関節リウマチとは
・関節リウマチは両手指、手首、膝などの関節が腫れて痛くなる病気です。関節症状は持続・次第に悪化し、適切な治療を受けないと関節の破壊・変形が生じてきます。
・関節リウマチの原因は未だ不明で、根治的な治療法はまだありませんが、治療は飛躍的に進歩し、関節の腫れや痛みの改善に加え、関節の破壊・変形も阻止することが期待できるようになりました。
・変形してしまった関節は元に戻りませんので、関節リウマチが疑われれば早くリウマチ専門医に受診することをお勧めします。
関節リウマチの治療
-抗リウマチ薬-
・まず抗リウマチ薬を使用します。抗リウマチ薬とは関節リウマチの炎症を抑える薬剤の総称で、関節リウマチ発症早期から積極的に使用します。
・主な抗リウマチ薬としてMTX製剤のリウマトレックス(メトトレキサート、メトレート)、アザルフィジンEN(サラゾスルファピリジン)、リマチル、ケアラム(イグラチモド)、プログラフ(タクロリムス)、アラバの6剤があります(カッコ内はジェネリック)。
・なかでもMTX製剤は抗リウマチ薬の中心的な薬剤で最も多く使用されます。MTX製剤の治療効果は他の抗リウマチ薬に比較して速やかで、しかもその後長期にわたり効果が持続します。MTX製剤は毎日服用する薬剤ではなく、通常1週間に3錠から服用を開始します(2日間で朝-夕-朝の3回に分けて服用)。効果が不十分であれば徐々に増量し、必要であれば1週間に8錠まで増量します。
・MTX製剤の副作用について; 口内炎や肝臓の機能を悪くすることがありますが、フォリアミン(葉酸)を週に1錠服用することでほぼ改善します。MTX製剤を服用すると胃の不快感、嘔気および嘔吐といった消化器症状がしばしばみられ、服用・増量が困難な場合にはMTX製剤の注射薬であるメトジェクトを検討します。週1回の皮下注射薬で、服用薬ではないため消化器症状が軽減されます。腎臓の機能が悪いと白血球数が減少して感染症が生じ易くなるので注意が必要です。薬剤性の肺炎、扁桃腺や皮下等のリンパ節の腫れ(MTX関連リンパ増殖性疾患)が散見されますが、MTX製剤の服用中止で薬剤性の肺炎のほとんどは改善(ステロイド剤を一時的に使用)、MTX関連リンパ増殖性疾患では約80%に改善が期待できます。
・MTX製剤に限らず、全ての薬剤には何らかの副作用を生じる可能性が少なからずあります。何か気になる症状があれば主治医に報告し、定期的な診察、採血等のチェックを受け、安全に薬剤を服用することが大切です。
・抗リウマチ薬は次に記載する生物学的製剤や分子標的治療薬と比較すると安価で、MTX製剤ではリウマトレックスの3割負担・4週分の薬剤費(以下同)は最大量の1週間8錠で1,271円、ジェネリックでは518円、注製薬のメトジェクトは同等量で3,396円です。その他の抗リウマチ薬の薬剤費(カッコ内はジェネリック)は、アザルフィジンEN 499円(250円)、リマチル541円、ケアラム1,702円(716円)、アラバ1,377円で、プログラフのみ9,828円と高価ですがジェネリックでは3,270円です。
・2012年に権威のある医学雑誌に“生物学的製剤の高価な薬剤費を考慮すれば、多くの関節リウマチ患者では従来型の抗リウマチ薬併用療法が適切である”と結論付けた報告が掲載されました。MTX製剤のみでは効果が不十分な場合、アザルフィジンEN、リマチルなど他の抗リウマチ薬を1剤、更に2剤へと追加併用することによって安価で有効な治療が期待できます。
-生物学的製剤-
・抗リウマチ薬を服用しても効果が乏しい患者さんが一部にみられ、その場合は生物学的製剤の使用を検討します。
・生物学的製剤にはレミケード、インフリキシマブBS(レミケードのジェネリックに相当)、エンブレル、エタネルセプトBS(エンブレルのジェネリックに相当)、ヒュミラ、アダリムマブBS(ヒュミラのジェネリックに相当)、シンポニー、ナノゾラ、シムジア、アクテムラ、ケブザラ、オレンシアの12種類があります。服用薬ではなく、製剤により点滴や皮下注射で投与します。
・投与後1~2週間で関節の腫れや痛みの改善がみられますが、生物学的製剤のみでは効果が不十分な場合もあり、通常MTX製剤を併用しながら生物学的製剤を使用します。
・生物学的製剤の副作用として結核、細菌性肺炎などの感染症に注意が必要です。B型肝炎ウイルスを持っている患者さんには投与できません(C型肝炎ウイルスの場合は慎重投与)。
・生物学的製剤は高価で3割負担・4週分の先発品の薬剤費は約1.6~3.3万円になりますが、レミケード、エンブレル、ヒュミラのジェネリックに相当するインフリキシマブBS、エタネルセプトBS、アダリムマブBSが発売され6,218~1.4万円で使用できるようになりました。経済的負担が大きいため、関節症状が良くなった状態(寛解)が続けば投与間隔の延長、生物学的製剤の中止を検討します。
-分子標的治療薬-
・新たな作用機序の薬剤(分子標的治療薬)としてゼルヤンツ、オルミエント、スマイラフ、リンヴォック、ジセレカがあります。服用薬で生物学的製剤と同等の効果が期待できますが、生物学的製剤同様に感染症(特に帯状疱疹)に注意が必要です。
・3割負担・4週分の薬剤費が約3.3~3.8万円と生物学的製剤と同等以上に高価であり、服用にあたって充分な説明を受ける必要があります。
-痛み止め、ステロイド剤-
・痛み止め(非ステロイド性抗炎症薬)の薬剤にはロキソニン、ボルタレン、ハイペン、モービック、セレコックスなど多数ありますが、痛み止めは関節の破壊を抑えることはできず、また、胃潰瘍、腎機能障害などの副作用に注意が必要です。
・ステロイド剤はプレドニンが一般的に使用されます。効果が速く、確実に期待できるので、関節の腫れや痛みが強い場合に用います。副作用に脂肪が付きやすくなる、高血糖、高脂血症、骨粗鬆症などがありますが、関節リウマチで使用する場合は少量(プレドニン5mg錠で1~2錠)です。
・痛み止め、ステロイド剤は抗リウマチ薬や生物学製剤などの使用で関節症状が改善したら
減量・中止しますので、副作用を過大に心配する必要はありません。
関節リウマチの症状は軽度から重度まで、また、間質性肺炎の合併症があったり、ある薬剤で副作用がみられたり、患者さんごとに治療薬の種類や容量が異なります。経済的な負担を考慮しつつ、個々に合った適切な治療で関節の痛みや腫れを改善させ、治療を継続することが大切です。